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はじめに─HPVタイプと発がんリスク
HPVは小型のDNAウイルスで,ゲノムDNAの塩基配列に基づいて10%以上異なるとnew type,2〜10%の違いではsubtypeに分類される.150種類以上に分類されているHPVタイプのなかで,子宮頸がんの原因となるハイリスクタイプは13〜14種類あり,16型・18型が世界中の子宮頸がんの70〜80%を占めている.われわれが行った細胞診正常女性1,517例の解析では,10代後半では36%,20代では29%に子宮頸部からHPV DNAが検出され,わが国でも若年女性を中心に不顕性感染は決して少なくないことを明らかにした1).
子宮頸部発がんの原因となりうるハイリスクHPV13タイプのなかでも,型によって感染から発がんに至るリスクは異なる.表1に子宮頸部病変の進展に伴う検出されるHPVタイプの頻度を示した〔2005年までの10年間にPCR法を用いて日本人女性の子宮頸部におけるHPV感染を報告した論文14編からのデータ(n=5,706)に筑波大データを加えてUpdateした〕1, 2).表1をみると,細胞診が正常でHPV陽性の女性ではいろいろなタイプのHPVがほぼ同じ割合で検出されるが,病変が進行するにつれて特定のHPVタイプが増えてくる.そこで,病変別の検出頻度からHPVタイプ別に高度前がん病変や浸潤がんへの進展リスクを算出したものが図1である.病変が進行するにつれて16型が4.26倍,18型が2.32倍に増えてくることを示している.日本ではハイリスク13タイプのなかでもHPV16,18,31,33,35,45,52,58型の上位8つの型が特にハイリスクであると考えられ,実際にこれらの8タイプが子宮頸がんから検出されるHPVタイプのほとんどを占めている.45型はわが国では全体的に検出頻度が低いが,海外では16型,18型に続いて頸がんから3番目に検出されるタイプなので,検出された場合にはリスクが高いと考えるべきである.
この結果を前方視的研究によって確認するため,軽度前癌病変患者570名をフォローアップするコホート研究(N=570,平均フォローアップ期間:39か月)が多施設共同研究としてわが国で行われた3).細胞診とコルポスコピーを用いて4か月ごとのフォローアップを行い,観察期間中に46例がCIN3へ進展し,361例が自然消退した.横断的研究の結果と同様,特にリスクが高いと考えられている8タイプが陽性の患者では細胞診異常は有意に自然消失しにくく(P<0.0001),かつ高度前がん病変へ進展しやすかった(P=0.0001)(図2).
これらの結果から,わが国のガイドラインではCIN1/2患者をフォローする際にはHPVタイピング検査を行い,HPV16,18,31,33,35,45,52,58のいずれかが陽性の患者とそれ以外の患者では区別して管理することが勧められている4).
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