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はじめに─HPVについて
ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus : HPV)は正二十面体のキャプシドに包まれた小型(直径50~60nm)のウイルスで,ゲノムは約8,000塩基対の2本鎖DNAである1).HPVはゲノムDNAの相同性の程度によって型が分類され,現在では90以上の型が分離されている.皮膚に感染し良性のイボの原因となるもの(1,2型など),粘膜に感染して尖圭コンジローマ(外陰部のイボ)の原因になるもの(6,11型)や子宮頸癌の原因になるもの(16,18,31,33,52,58型など)など,HPVの型によって感染部位と生じる疾患が異なる.子宮頸癌病変からきわめて高率(90%以上)にヒトパピローマウイルスのDNAが検出されることからHPV感染は子宮頸癌発症の最大のリスクファクターと考えられている.
HPVはsexual activityと関連してその検出頻度が上昇するため性行為によって伝搬されるウイルスであることは間違いないが,HPV感染は梅毒や淋病のようないわゆる“性病”とは異なる.特に20代女性では不顕性感染は決して少なくなく,そのほとんどが一過性であることも知られている.3年間の観察で米国女子大学生のおよそ40%に新たなHPV感染がみられたという報告もある2).わが国での一般健常女性を対象にしたHPV感染の状況を示すデータは少ないが,筑波大のデータでは細胞診正常の女性のうち10代では36%,20代では29%にHPV DNAが検出された(図1)3).50代以降でHPV陽性率が再上昇する理由は不明であるが,海外の報告でも同様の傾向がみられている4).年齢別陽性率をわが国の人口ピラミッド(2005年国勢調査)に当てはめると,約1,200万人の日本人女性がHPVキャリアと推定される.このようにわが国でも若年女性を中心に不顕性感染は決して少なくない.
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