指標
卵巣機能解明へのアプローチ
麻生 武志
1
1東京医科歯科大学医学部産科婦人科学教室
pp.1019-1028
発行日 1989年11月10日
Published Date 1989/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208100
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Ⅰ.はじめに:卵巣機能研究の軌跡
雌性生殖器の一つであり,卵を作り,また内分泌をいとなむ卵巣は,数センチメートルの腹壁を隔てて骨盤内に存在するにもかかわらず,生体内での機能の詳細については未だ解明されていない点が多く残されている。
卵巣機能解明への軌跡をたどると,紀元前300年から紀元後50年にかけての書物に卵巣に関する解剖学的な記載が見られる。Graafian follicleとして今日もその名をとどめるde Graaf (1670年)の時代には卵胞がすなわち卵であるとの認識がなされていた段階であったが,von Baer (1827年)によって唯乳類の卵巣における卵と卵胞との関係,およびそれらの周囲の構造が明らかにされるに至った(図1)1)。その後,胚細胞の発生様式や卵発育の細胞形態学的研究が進み,1910年から1930年頃にかけて下垂体と卵巣との機能的関連,卵胞の成熟,さらにPincusを中心とする卵巣で産生されるsteroid hor‐moneの分離・同定へと卵巣機能の解明がなされて来た。
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