特集 胎内治療
胎児鏡とその応用
牧野 恒久
1
,
飯塚 理八
1
Tsunehisa Makino
1
,
Rihachi Iizuka
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.413-417
発行日 1988年5月10日
Published Date 1988/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207781
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近代の産科学の中で最も大きな発展をみた領域の一つは胎児学あるいは胎児情報学ではなかろうか。この領域はたんなる産科学の一部に属するよりは,近い将来一つの独立した臨床医学の領域を形成する可能性をも秘めていると思われる。
一口に胎児情報と称してもその実際は多岐にわたる。古典的な母体腹壁を介して得られる胎児の触診,聴診による情報をその原点とすれば,近年のそれは,母体血中・尿中のホルモン情報,医用電子工学(medical elec—tronics)による胎児情報,羊水および浮遊細胞からの生化学情報や遺伝情報などに分けられる。これらの新しい胎児情報と胎児鏡による胎児情報の決定的な差異は後者が直視下で入手しうる胎児情報である点と思われる。このことは,胎児情報を得るまでの手枝にやや困難を伴うものの,一たん入手した胎児情報から判断して必要とあれば直接胎児へアプローチが出来る可能性も存在する。ここに私共が以前からfetal therapy (胎児治療)と呼んで来た臨床上の治療手段が初めて実行可能となる余地が生じてくることになる。
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