境界領域の再評価とその展開 特集
産婦人科心身症
女性にみられる問題行動
女性のライフ・サイクルと心身症—精神衛生の立場から
池田 由子
1,2
Yoshiko Ikeda
1,2
1聖徳学園短期大学学生保健センター
2国立精神衛生研究所
pp.311-313
発行日 1987年5月10日
Published Date 1987/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207586
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女性の心理的危機を考えるとき,思春期,結婚,妊娠,出産,子どもの巣立ち,閉経,夫の定年,夫の死亡など,いわば,人生のふし目が大きな意味を持つ。このライフ・サイクルは,図に見るように戦前と戦後では大きな変化を示している。変化の理由は子どもの出生数の減少と,平均寿命の伸びによる。昭和15年には平均子ども数が5人で,末子が小学校に入るとき,母親はすでに42歳であった。平均寿命は50歳以下なので,当時の主婦は一生を出産・育児・家事に消耗しつくして自由な余生を殆ど持たなかった。ところが現在では子ども数は平均1.8人,末子が小学校に入る35歳から,死亡するまで40年あまりの歳月が主婦に与えられている。しかも,この時間をどのように活用し,どのように生きるかについて,手本となる先人の例はない。したがって主婦は自らが悩みつつ,模索しつつ,見出さなければならない。
私たちが昭和56年〜58年度に行った,3,374名の主婦の精神衛生調査の結果から見ると,専業主婦には次のような特徴が見出された。専業主婦では,常勤,パート,農業の働いている他のグループにくらべ,20代および30代前半では心身ともに健康である。生活の充実感も高く,薬をのむ率も低く,医療機関への受診も少ない。精神衛生症状(SRT)の得点も低い。
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