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はじめに
わが国だけのことではないが,世界の人々の平均寿命が大変な延びを示してきている.わが国の平均寿命は,1952(昭和47)年には男61.9歳,女65.5歳であったが,50年後の2002(平成14)年には男78.32歳,女85.23歳と大幅な延びを示している.この理由としては,大幅な経済成長による生活(栄養・居住)環境,労働環境,医療環境の向上の成果と説明されている1)が,女性の伸びは男性に比較してより大幅である.すなわち,3.6歳の平均寿命にみられる性差が50年間に6.91歳と倍増していることは,疾患感受性,また老化の程度における男女の違い,性差の存在を示唆している.このことは,人々の健康,健康の維持を考えるときに,男性と女性を区別して考察する必要性を示しているものである.最近,呼吸器疾患においても,欧州呼吸器学会から“Respiratory Diseases in Women(女性の呼吸器疾患)”と題したモノグラフ2)が刊行されていることは,このような時代の状況を反映したものであろう.また,このような疾患における性差の検討は,そのまま疾患の病態生理の研究に連なるものであることも指摘できることである3).
「女性のライフサイクル(生き方,生活様式)と呼吸器疾患」と題した本稿においては,第1に各種疫学統計からみた呼吸器疾患における性差の検討を年齢別検討を加えて行なう.第2に各種呼吸器疾患における性差のみられる理由について,とくにライフスタイルとの関連性について考察を加える.第3に,女性に多い呼吸器疾患,とくに,女性にのみみられるリンパ脈管筋腫症に加えて,非結核性抗酸菌症,膠原病性間質性肺炎について,現状を要約して述べることとしたい.
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