特集 うつの時代―うつ病を改めて理解する
女性のライフサイクルとうつ
加茂 登志子
1
1東京女子医科大学附属女性生涯健康センター
pp.368-373
発行日 2008年5月15日
Published Date 2008/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101317
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一般に,小児・学童期の発達障害などは男児に多く発症するが,思春期頃から女性の罹患率が増大し,閉経以降,女性の精神疾患罹患率はさらに上がるとされている.表に合衆国とわが国における精神疾患の生涯罹患率を男女別に示した1).気分変調症,双極性障害,季節連関性うつ病など,一般に気分障害は女性に多く発症し,なかでもうつ病はおよそ2:1で女性に多く見られることが知られている.気分障害と並んでパニック障害や社会恐怖,全般性不安障害などの不安障害も女性に多い.また,外傷後ストレス障害(PTSD)も同様である.
うつ病が女性に多い要因としては,女性ホルモンの疾病成因や経過への関与と共に,ライフサイクル上に生じる様々な身体的,心理社会的ストレスが,うつ病発症の状況因となることが挙げられよう.うつ病はとりわけ性成熟期に好発する.うつ病の有病率は20代後半から30代前半と更年期の2つの人生のステージにおいてピークを迎える.本稿では,女性のライフサイクルに生じる心理社会的危機と女性ホルモン分泌の変動に伴う危機について振り返った上で,女性のうつ病における4つの重要な臨床的状況と言われる,月経に関連するうつ病,妊娠とうつ病,産後うつ病,そして閉経期(更年期)におけるうつ病について述べたい.
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