先進医療—日常診療へのアドバイス 特集
リプロダクションと凝固線溶系
胎盤と凝固線溶系—とくに血小板凝集阻止作用をめぐって
相馬 廣明
1
,
佐山 尚子
2
Hiroaki Soma
1
,
Shoko Sayama
2
1東京医科大学産婦人科教室
2北里大学衛生学部血液学教室
pp.675-678
発行日 1986年9月10日
Published Date 1986/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207451
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胎盤では実に多くの蛋白やホルモンが産生されるほか,凝固促進因子や線溶抑制因子なども含まれ,産科学的に重要な止血機構に働いている。また妊娠時の子宮—胎盤間の調節機構や胎児のためのhomeostasisにも働くと考えられる。しかも最近の新しく胎盤から抽出された胎盤蛋白が凝固と線溶系の機序に働くことが次第に知られ,注目されて来ている。
元来妊娠時には母体血の凝固因子の増量や線溶活性低下がみられ,母体血の血栓化傾向が知られている。これが単なる妊娠時の生体防禦機構なのか,分娩時出血に対処しての生体機構なのか必ずしも判然としないが,しかし胎盤内血流は絶えず流動的であり,妊娠中毒症などによる子宮—胎盤間接合部位の血管狭窄などによる減少が起きない限り,絨毛間腔内の血液供給は円滑に行われている。このような血液の流動性は,胎盤内循環血の血流速度やうず巻き形成による血球崩壊と,血小板凝集による血栓助長を来しやすい筈なのに,必ずしもそのような血栓化は一様に胎盤内には起きていない。この理由として,あるいは胎盤内において血小板凝集を抑制するような物質が生じており,それが働いているのではないかと推定される。たとえば血小板凝集阻止作用を有するPGI2(プロスタサイクリン)などは,重症妊娠中毒症時にはその産生が抑制され低下するという。そのPGI2を胎盤が産生するのかどうかを巡っての報告がある。
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