先進医療—日常診療へのアドバイス 特集
重症合併症妊娠
心疾患合併妊娠の安全限界
佐々木 記久子
1
,
千葉 喜英
1
,
朴 永大
1
Kikuko Sasaki
1
1国立循環器病センター
pp.283-285
発行日 1986年4月10日
Published Date 1986/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207365
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1982年1月,国立循環器病センターに周産期治療科が開設されて以来1985年12月までに当科で取り扱った心疾患合併妊娠の分娩は,137例であった。その内訳を表に示す。その中で特徴的なのは,以前は心疾患合併妊娠の過半数を越えていた後天性弁膜疾患の減少と,先天性心疾患および不整脈疾患の増加である。受診状況は,妊娠初期より当科で管理されていたものが47%で,残りは妊娠中期,後期での紹介である。
現在,妊娠継続可否の判断基準として,NYHAの分類でⅢ度以上,小林の分類でⅢ度以上,あるいは大内の判断基準などが知られている1,2)。しかし,先に述べたような心疾患の種類の変化と,超音波診断法をはじめとする母体および胎児の機能診断技術と治療技術の進歩向上,さらに,人工早産させた場合の未熟児管理の進歩により.心疾患合併妊娠の安全限界対する考え方も変化せざるを得ない。当科では,心臓専門医との緊密な連係のもとに心疾患妊娠の積極的管理をめざしているが3),心疾患婦人の妊娠分娩に対する安全限界の設定は,その心疾患の種類及び程度により変化させなければならないのは当然のことであろうし,その施設の妊娠母体と胎児の管理能力と,患者個人の社会的側面,すなわち長期間の安静・入院,さらに分娩後の育児に対する家人の協力等によっても変化せざるを得ない。
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