ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 妊娠中毒症
妊娠中毒症の病態と概念—最近の考え方
須川 佶
1
,
駒谷 美津男
1
Tadashi Sugawa
1
,
Mitsuo Komatani
1
1大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.843-848
発行日 1985年11月10日
Published Date 1985/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207274
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妊娠中毒症は,現在でもなお学説の疾患といわれ,その病態論に統一的な見解が得られていない。裏返せば,そのことが妊娠中毒症の疾病性格そのものを物語っているのかもしれない。つまり妊娠中毒症の病態を単一のものとしてとらえるのではなく,妊孕現象における「母体の適応不全症候群」という概念でとらえることが必要と考えられる1)。
妊婦においては,内分泌,代謝,免疫などの環境変化がみられ,しかも子宮をはじめとする各臓器の形態と機能の変化と相俟って,妊娠維持,分娩を目的とした生体の適応として応答する機能が発現しているものと理解される。しかしその適応現象も生体の恒常性維持機構のの原則の中で,一定の限界があり,その限界への接点で分娩が発来するものと解釈したい。そうした折,分娩発来時期に至らずして,その適応能に限界が生じた時,そこに適応不全症候としての妊娠中毒症が発症するという理解である。
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