ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 体外受精
今後の医学的問題
野田 洋一
1
,
矢野 樹理
1
,
森 崇英
1
Yoichi Noda
1
1京都大学医学部婦人科学産科学教室
pp.817-821
発行日 1985年10月10日
Published Date 1985/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207270
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
不妊症に悩む患者は,夫婦全体の約10%に及ぶと考えられている。その中で排卵障害に基づく不妊症は,近年の生殖内分泌学の目ざましい発達により克服されつつあるが,不妊症の30%を占めるといわれる卵管性不妊症に対しては,従来は全く有効な治療法がなかった。ところが1978年,SteptoeおよびEdwardsによる世界初の体外受精児誕生1)の報告は,この卵管性不妊症に対する画期的治療法として注目を集め,現在では世界各国の医療機関で試みられ,すでに数百人の生児が得られている。日本でも1983年東北大学による最初の出産例が報告された後,徳島大学など多数の医療機関ですでに10数例の出産例が報告されており,その適応範囲も両側卵管通過障害のほか,精子異常症(乏精子症,精子無力症),免疫性不妊(抗精子抗体),原因不明不妊へと拡大されてきている。このように,体外受精は不妊症治療に欠くことのできない治療手段として定着しつつあるが,その妊娠率は決しで満足すべきものといえず,今後改善あるいは解決されるべき問題点はまだ多い。本稿では体外受精に関する現況と今後の医学的問題点について,体外受精の手順に従って解説を加えることとする。
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.