主張
非醫師的診療と今後の問題
高橋 明
pp.96
発行日 1951年9月15日
Published Date 1951/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200906
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數年前の事であるが,或る日40歳位の一人の男が私に逢いに來た。用件を聞いて見ると,彼れ曰く,自分は永年胃腸を患つて居て,色々と醫療を受けたが,一向に治らなかつた。最近に至り自分自身で腹部の摩擦療法を老案し,之を朝夕實施した結果,數週間で,さしも頑固な病疾もぬぐうが如く全快した。その喜びは言葉では云いあらわせぬ程である。そこで此喜びを分つ意味で知己友人中同病に悩んで居るものに實施した處100パーセントに成功した。ついては貴病院に入院中の胃腸疾患々者に無料で施術してあげたいと思うから許可して呉れと云うのである。私は御好意は感謝するが病院にはマッサージ專門の人が居て,必要に應じて入院患者に施術をして居るから今の所間に合つて居ると云うて輕く斷つた。すると其男は更に内科部長を訪れて同樣の事を申し入れたが,内科部長も一言の下に之を斷つたので,其後は來なくなつた。これなどは良性の方で,便秘の人などに腹部の摩擦が或る程度有效な事は誰しも認めて居るが,彼れの施術は胃腸萬病に奏效すると云うのであるから全く恐れ入る。
又私の知己に指壓療法に凝り固まつたものがあつた。遂には自から術者となつて多數の人々に施術し始めた。その内に何虚からか疥癬に感染したものらしい。兩手一面に瘙痒の甚しい發疹を見るに至つた。
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