特集 胎内治療
血液型不適合妊娠
松浦 俊平
1
Shumpei Matsuura
1
1愛媛大学医学部産婦人科教室
pp.429-431
発行日 1988年5月10日
Published Date 1988/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207784
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1970年代に入って抗Dヒト免疫グロブリンが使用され普及をみたことによって,Rh式血液型不適合妊娠による母体感作のほとんどが予防されるようになり,児の罹患も激減した。しかし,なお少数であるが初回妊娠時の感作成立例や,Rh亜型または他の血液型の不規則抗体による重症胎児罹患例が散発的にみられる現状である。これらの感作妊婦における重症胎児罹患への対策としては,子宮内胎児輸血が主流とされてきたが,その成績は必ずしも良好でなく,児の生存率は50%を下まわるとの報告が多くみられ,とくは胎児水腫がある場合は4〜29%の生存率にすぎず1),むしろ治療に対する消極論もみられた。1980年代に入り,母体血漿交換法や抗体除去法が妊娠初期に流産を反復するような重症例においても挙児に成功をおさめ,筆者らの報告2,3)をはじめ,わが国では約80%の児生存率を得ることが知られている4)。
近年,超音波誘導下に行われる胎内治療手技の改善により子宮内胎児輸血の成功率も向上しており,また胎児鏡下の血管内輸血も安全性を増すとともに超音波誘導のみで血管内輸血が実施される動向もみられるので,その概要につき述べる。
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.