明日の展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 卵巣
Ⅱ腫瘍を中心に
Topics
Postmenopausal Palpable Ovary Syndrome (PMPO)
安田 允
1
Makoto Yasuda
1
1東京慈恵会医科大学産婦人科学教室
pp.183-185
発行日 1984年3月10日
Published Date 1984/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206954
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婦人科悪性腫瘍において子宮癌が細胞診の発展に伴って早期診断が可能となり,その死亡率も年々低下していることは周知の事実である。一方,卵巣癌は診断技術の進歩した現在でもなお早期診断が困難で,開腹時の約60%は卵巣を超えて拡がっており,科学的診断よりむしろ偶然の機会とさえいわれる所似でもある。事実ここ10数年来,卵巣悪性腫瘍の死亡率は改善されておらず,その死亡者は年々増加しているのが現実である。早期診断が困難な理由としては,①解剖的に骨盤内臓器のため直達的な方法がない。②一般に自覚症状が現われず無症状に経過する。③特殊な腫瘍を除き,腫瘍の大多数を占める上皮性腫瘍では腫瘍マーカーが少ない,ことなどである。
このような現況にあって婦人科医が骨盤内診察を6カ月ごとに行い,早期診断を心掛けても,無症候婦人を対象としたルーチンの双合診により発見される卵巣腫瘍はおよそ1万人に1人の割合であることが報告されている1)。また診断された時にはその60〜80%が骨盤腔を超えて拡がっていることも事実である2,3,7)。このように早期診断の困難な本腫瘍に対するスクリーニング法としてBarberとGraber1)はPostmenopausal palbableovary syndromeを紹介した。
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