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病歴データのコンピュータ化,というと,非常に高度な難しい内容を意味するかのように思われがちだが,決してそのようなものではなく,日常得られる患者の情報を計算機に記憶させ,必要なときにその内容を引き出し,あるいは集計することである。従って電算化を上手に利用すれば,診療の効率化や統計に非常に有効である。産婦人科病歴データのコンピュータ化の試みは非常に古く,欧米ではすでに1971年の報告にその一部が含まれている1)。その後,我が国においてもいくつかの試みがなされてきたが2),それでも,今回このテーマが特集となるほどに我が国でのコンピュータ化は進んでいない。その原因は,まず第一に,診療医にとってデータ入力やあるいは入力のための資料を作成する時間がほとんどないことが挙げられる。第二には,つい最近まで価格に比し計算機にその処理能力がなく,又,登録されたデータの管理や検索を行なう言語(データベース管理言語)なども整備されていなかったことが考えられる。現在でも計算機の価格/性能比は日進月歩の感があるが,種々のデータベース管理言語も整備され,オンラインで各種の検索や簡単な統計計算が可能となりつつある今日,あらためてコンピュータ化の実際を知ることは大変重要であろう。
高知医科大学産婦人科で現在稼動中,又は設計段階に入っているコンピュータシステムは多岐に渡っており,その中には新生児監視など刻一刻変動するモニター情報からの病歴データ取り込みシステム,患者の妊娠歴や分娩時の診断名など分娩毎の周産期情報管理検索システム,並びに,子宮癌など,特定疾患患者の治療経過追跡用システムなどが含まれている。本稿では特にその中で,現在最も多く資料が得られている周産期情報管理検索システムについて述べ,合せてコンピュータ化の利点について紹介する。
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