指標
新しいエストロゲン四分画迅速微量定量法と,その臨床応用
相良 祐輔
1
,
岡谷 裕二
1
,
山懸 猛日
1
,
武田 佳彦
1
Yusuke Sagara
1
1高知医科大学産科婦人科学教室
pp.617-625
発行日 1981年9月10日
Published Date 1981/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206478
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
性ステロイドホルモンの一種であるエストロゲンは,ヒトではEstrone,Estradiol,Estriol,16—epi—estriol,Estetrolが代表的なものとして同定されている。それぞれのエストロゲンに関して主要産生臓器,代謝経路,生理的意義についても多くの報告がみられる。しかしながら,血液,尿といった生体試料中のエストロゲンの測定成績が,病態解析や治療指針といった実地臨床に応用されている範囲は,きわめて限られたものであるのが現状である。すなわち,母体・胎盤・胎児が一つの機能単位を構成し,Estrone,Estradiol,Estriol,Estetorolの産生代謝経路がほぼ解明されており,したがってその測定成績から,ほぼ胎児・胎盤機能の推測可能な産科領域が,今日の臨床応用の主たる場である。
これは一つには,検査法の測定感度の問題もあって,妊娠末期1こは尿中に,非妊時の1,000倍近くも増量するエストロゲンが排泄されることが,実地臨床検査としてroutine化された大きな理由である。したがって現在,routine化されているエストロゲン測定法も,尿中のtotalestrogcnの測定の域をでておらず,胎児機能や胎盤機能に関して,より個別的情報となるエストロゲン四分画の測定は,Radioimmunoassayに依存せざるを得ない。Radioimmunoassayによるエストロゲンの分画の測定は,測定系の特異性の問題を別としても,特殊な検査室の必要性,放射性廃棄物の問題,コスト高,実地臨床への対応性の不良さなどの点から,臨床検査室でのroutine化にはほど遠いこともまた事実である。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.