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Testosterone-estradiol biuding Globulin (TeBG)
今回のFIGO世界大会は,全般にみて世界各国から多数の産婦人科臨床医が集まった祭典としての性格が感じられ,各会場において,多数の優れた専門家に直接接する機会が与えられたのは有意義であった。一般に国際学会における特別シンポジウムの発表や招待講演は,学会の中心的な役割を果たしているとはいえ,既に誌上で発表された成果の集大成に過ぎなかったり,他の研究者の業績を総括した内容のみのことが多く,最新の研究成果や知見は,公募の一般演題の中に見出されることがしばしばである。今大会における一般演題の会場は1〜2階の主会場から隔離された最上階に位置しており,専用エレベーターを探すのに苦労させられた。各会場は20数名の収容力があるかないかの小部屋であったが,出席者は熱心に演者の発表を傾聴し,活発な討論がなされていたのは印象的であった。とくに,Gynecological Endo-crinologyを主題としたFC55〜64の一般演題セクションには数多くの興味深い演題が発表されていた。中でも,産婦人科領域では比較的目新しいものとして,ヒト血清中の性ステロイドホルモン結合蛋白(TeBG,SHBGあるいはSBPなどと命名されている)に関する2演題が私にとっては注目に値した。TcBGの生理的意義に関しては,現在まで不明な点が多いが,エストラディオールやテストステロンなどの性ステロイドホルモンと特異的に結合し,生体内の性ステロイドホルモンの貯蔵,輸送を司っていると考えられていたが,最近,標的臓器における遊離型性ステロイドホルモンの供給に関与し何らかの調節作用を行なっている可能性が指摘されている。ヒトTeBG濃度は,エストロゲン依存性を示しアンドロゲンやプロゲステロンの投与により低下する。FC57bのDr.NakamuraとMishellの報告によるとpro-gesteroneの一種であるLavonorgestrelを成熟婦人に投与するとRIAで測定したエストラディオールとテストステロンの総濃度はそれぞれ投与前後に不変であったが血清TeBG濃度は低下し,遊離型の性ステロイドホルモンは著明な増加を示したという。他の演題はTeBGの測定法に関するものであった。同セッションでは,Dr.DiczfalusyやDr.Klopperらの著明な学者による活発な質疑応答がなされ,主会場などでみられる講演などと異なり,学問が身近に感じられ,強い感銘を受けた。
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