研究へのいざない・15
組織・細胞化学研究法(その2)—Alkaline Phosphataseを中心にして
野沢 志朗
1
,
太田 博明
1
,
和泉 滋
1
Shiro Nozawa
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.59-64
発行日 1979年1月10日
Published Date 1979/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205982
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅲ.酵素反応
酵素組織細胞化学の主目的とするところは,組織あるいは細胞内の酵素の局在の追求であるが,適切なる検体の切り出し,固定,切片作製(以上,組織・細胞化学研究法その1 Vol.32,No.9に記載)に加えて,適切なる酵素反応を行なうことによって,はじめて組織・細胞の小器官構造の保存とともに,酵素活性および酵素の局在性の保存が可能となる。酵素組織細胞化学における酵素反応を行なうとき,細胞内の酵素を直接可視的にすることはできないが,一定の条件下で,組織細胞内の酵素に外から酵素基質を作用させると,基質が酵素により分解されて生じた反応産物は酵素の局在部位に沈着するので,反応産物を可視的にすることにより間接的に酵素の局在を知ることができる。したがってその分解産物が拡散をおこしたり,溶解性であると,正しい酵素局在はえられないことになり,それらは"誤りの反応"となる。まず光顕レベルで,酵素の組織細胞内局在部位に出現する正しい反応,いわゆる"真の反応"をコンスタントにとらえるべく手技に熟達したのちに電顕レベルでの手技を行なうべきで,さもないと電顕組織細胞化学は"誤りの反応"の拡大にしかならない。そこで,われわれは光顕と電顕の組織細胞化学をいつも平行して行ない,"真の反応"であることを確認するように努めている。
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.