特集 リプロダクションと社会問題
リプロダクションとprimary health care
我妻 堯
1
Takashi Wagatsuma
1
1国立病院医療センター産婦人科
pp.439-443
発行日 1980年6月10日
Published Date 1980/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206260
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最近primary health careということばが日本でもよく使われるようになったが,その概念については,適当な日本語訳がないこともあって必ずしも十分なコンセンサスが得られていない。ここでは,primary health careの概念を広くとり,武見日本医師会長の主張されるような基本概念として理解する。すなわち一人の患者を地域内において,全体として(as a whole)全人的把握をなし,医師のもつ医学的知識と教養,さらにチームとしての活動によって健康時の健康増進,予防,治療,リハビリテーションまでを含む広範な医療活動を行なうことを意味する。このためには,Primary health careに従事する医師は,上述のような活動に必要な医学的知識や教養をもち,地域住民の生活に溶けこんでいなければならず,住民の生活様式などを十分に理解したうえで環境科学,生態学などの知識を基盤に,医学管理の地域展開を可能にし得るものでなければならない。
一方,reproductionを医療の面からいえば思春期婦人科学の問題,不妊症,避妊,妊娠,出産,更年期障害,癌検診など産婦人科学全般にわたる問題が含まれる。これらの問題とprimary health careとのかかわりをすべてにわたって論ずることは,いいかえれば,第一線で働く医師の産婦人科全般に関する役割を論ずることになり,限られた紙面では不可能である。
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