新しい視点をさぐる 診断のテクニック
免疫異常
八神 喜昭
1
,
中根 茂雄
1
Yoshiaki Yagami
1
,
Shigeo Nakane
1
1名古屋市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.673-676
発行日 1978年9月10日
Published Date 1978/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205893
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今日における免疫学の進歩により,産婦人科学においても免疫学的手法を用いての研究や診断が必須のものとなっている。とくに細胞性免疫学の発展は著しく,細胞性免疫の生体内(in vivo)あるいは生体外(in vitro)の検出法が多数開発されてきた。細胞性免疫の本体はまだ物質としてとらえられてはいない現状であるが,リンパ球を中心とする免疫細胞(immunocytes)の協同的な働きにより,液性免疫とも功妙にバランスをとり,人体にとって恒常性維持の機構として働いている。したがって,免疫系の破綻は,臨床的な疾患と密接に結びつくことが考えられる。免疫不全症候群はその代表的なものであることは,周知のごとくであり,そのほかアレルギーや自己免疫疾患が良く知られている。これらの疾患は,免疫細胞系の原発性あるいは続発性の器質的ないし機能不全に基づく,いわゆる免疫病と呼ばれている。一方,産婦人科領域においては,純粋な免疫病と思われる疾患は少なく,卵巣自己免疫による不妊症が考えられているが,いまだ研究的段階である。そのほか産婦人科領域で免疫現象によると思われる疾患あるいは免疫状態が異常になっていると考えられるものは,表1のごとくと思われる。これらのうち精子免疫と血液型不適合妊娠では,液性免疫が,癌免疫と妊娠異常では細胞性免疫が主役となっていると考えられている。
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