新しい視点をさぐる リプロダクションと母体適応
生殖免疫と母体適応
植田 勝間
1
Katsuma Ueda
1
1大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.551-555
発行日 1978年8月10日
Published Date 1978/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205870
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妊娠の成立により,母体には妊娠性変化とよばれる形態的・機能的変化が現われてくるが,これらの変化は,終局的には胎児の発育に対して合目的性をもった母体適応の表現とも理解される。中でも妊娠母体にみられる内分泌および循環動態の変動は極めてdynamicで,たとえば,妊娠時に増量してくるhuman placental lactogenは,母体のlipolysisを促進させる代謝律速作用をもち,FFAを増加させ,過剰のglucoseを胎児に動員させ,胎児発育の重要なエネルギー源の一つとして役立たせることにその作用が認められる。また一方,妊娠母体は,胎児の発育に必須の酸素や栄養源を輸送させるべく,母体心拍数,心拍出量の増加をはかり,絨毛間腔に充満されている豊富な母体血を活撥に循環させている。以上のごとく,母体に認められる妊娠性変化は,それが局所的なものであれ,全身的なものであれ,新しい個体の誕生に向っての合目的的変化と考えられよう。
さて,semi-allogeneic allograftである胎児と胎盤を子宮内に生着・増殖させる現象は,たしかに免疫学的には例外的事象とみなされ従来より免疫学的拒絶をまぬがれている機構の解明に関する研究が数多く報告されている。
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