疾患の病態と治療 産婦人科疾患の免疫学的アプローチ
陣痛発来と免疫
須川 佶
1
,
植田 勝間
1
Tadashi Sugawa
1
,
Katsuma Ueda
1
1大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.307-311
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205407
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近年における免疫学の画期的な進歩は,生体の免疫学的監視機構を特定細胞の機能を数量化して表現し得る方法論を開発し,癌の増殖における宿主側よりの制御に関し,新しい考察を加えつつある。そしてこの過程において勝ち得られた免疫学的解析手段を生殖免疫にもadoptし,これにまつわる免疫学的驚異を解明せんとする努力が最近活発になされるようになつてきた。免疫の基本である「自己と非自己の識別」の存在にもかかわらず,癌免疫および生殖免疫の両分野において,結果として異種細胞の増殖を許容するが,われわれの癌免疫に期待するものは,免疫機構の強化による異種細胞の発生・増殖の撲滅(正の免疫)であり,一方生殖免疫においては,免疫機構よりの隔絶がsemi-allograftである妊卵の体内保持を許容する(負の免疫)所に求められるものと考える。
臓器や皮膚の移植が1卵性双胎を例外として,通常は成立せず数日間の後に免疫学的拒絶を受けるのが原則である。そうすると哺乳動物の生殖に関し,semi-allograftである妊卵の子宮内発育を容易に許容する現象は移植免疫学上,唯一の例外と見なさざるを得ない。一方動物のcheek pouchやヒトの前眼房への移植は皮膚や臓器の移植に比べ,より成功例の高い事実が報告され,これは免疫学的拒絶機構より隔絶されたいわゆる免疫学的聖地とも呼ばれている解剖学的な原因に起因しているためと説明されている。
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