トピックス
妊娠維持とhCGの免疫抑制効果
田部井 徹
1
,
加来 隆一
1
1国立病院医療センター・産婦人科
pp.851
発行日 1977年10月10日
Published Date 1977/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205688
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妊娠時hCGは,10〜12週をpeakとし,その後減少する特異な分泌像を示すが,その生理作用や作用機序に関しては現在いまだ不明な点が多く,とくに妊娠維持の機構にどのように関与しているか確定的な結論は出ていない。少なくともin vitroにおいて,hCGは黄体の賦活作用1)や胎盤の性ステロイドホルモン生合成・代謝のautoregulation2)などに関与しており,その点で妊娠維持に役立っている可能性が考えられる。また,胎児が移植免疫学的に異物であることから,hCGが母体の拒絶機構を抑制することにより,妊娠が維持されているという考え方もある。
とくに1960年,Nowellが,従来から,もはやこれ以上分裂しない終末細胞とみなされていた小リンパ球にin vitroでPhytohemagglutinin(PHA)を作用させると大型の幼若細胞に変化し,分裂をはじめることを発見した。このことが端緒となって,各種の細胞性免疫の検査法が開発され,種々な分野での妊娠に対する免疫学的な研究が盛んになった。Purtiloら3)は,妊娠母体血中のリンパ球のPHAに対する反応性が非妊時に比べ著明に低下することを認め,この事実より母体血清中に何らかの免疫抑制因子が存在すると考えて,この因子が妊娠維持機構と何らかの関連性があることを示唆した。
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