臨床メモ
腰椎麻痺による帝切と低血圧症の予防
佐藤 直樹
1
1帝京大学医学部産科婦人科学
pp.834
発行日 1977年9月10日
Published Date 1977/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205686
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腰椎麻酔は手技が簡単で,腹壁筋が著しく弛緩し,そのうえ全身麻酔による麻酔剤の胎児,あるいは子宮への影響がないので,帝王切開術には適切な麻酔として汎用されている。反面,大部分に低血圧症が見られ,さらに腰麻ショックになる欠点があることも知られている。とくに帝王切開に際して血圧下降をきたす例が多いのは,腰麻による血圧下降の他に,postural hypotensionすなわち仰臥位低血圧症候群によるものが含まれるからである。この低血圧症を予防するために古くからいろいろな方法が考えられているが,その効果について議論が多い。
腰麻による血圧下降の原因は交感神経が遮断され,末梢の血管拡張が起こり,とくに下肢に血液がプールされ静脈還流が減少するためである。これに血管収縮剤(エフェドリンなど)を静注すると,血圧は上昇するが,子宮胎盤血流量はほとんど改善されず,胎児仮死の誘因になる。この子宮胎盤血流を改善する方法として,大量の輸液負荷が効果的であると考えられている。postural hy—potensionの原因は,妊娠子宮による下空静脈の圧迫によるものとされ,これに対しては,右側臀部挙上(left lateral tilt)でVena Cavaの圧迫を軽減させる方法がとられる。
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