疾患の病態と治療 転移
絨腫転移の病態と対策—とくに肺・肝転移合併例について
相馬 広明
1
,
吉田 啓治
1
,
指田 達郎
1
,
高山 雅臣
1
,
赤坂 恒雄
1
,
又吉 国雄
1
,
所 和夫
1
,
新井 克己
1
,
向田 利一
1
,
菊地 威史
1
,
菊池 献
1
,
中村 秋彦
1
,
多田 正毅
2
,
伊藤 博之
3
Hiroaki Soma
1
,
Masaki Tada
2
,
Hiroyuki Ito
3
1東京医科大学産科婦人科学教室
2市立小山病院産婦人科
3聖路加国際病院産婦人科
pp.517-523
発行日 1977年6月10日
Published Date 1977/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205637
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婦人科領域の悪性腫瘍のうちで最も遠隔臓器へ血行性転移をきたしやすいのは,肉腫を除いては絨毛上皮腫(絨腫)が圧倒的に多い。そのうち絨腫肺転移は,私どもの絨腫剖検例のうちでも96%と高率を占めており,肝転移は23.5%の頻度である。しかし肝転移例では,他臓器たとえば肺,脳,腎,脾,腸管などに転移が生じている場合が全例であり,肝転移のみを有する場合は極めて少ないといえる(表1)。
絨腫肺転移については肺のみに限局する場合が多く,すでにたびたび報告されているように,肺が転移腫瘍細胞の単なる濾過器だけでなく,遊走転移細胞に対する第一の関門となっていると考えてもよい。すなわち肺を越えての他重要臓器への転移巣の拡大は予後を不良とする。しかも現段階では肺転移は悪性度を判定する指標ではあるが,その発見は胸部X線撮影によって可能であり,またその治療も化学療法や肺転移巣切除という手術療法の併用によって,かなりの効果をあげうるようになってきた。肺転移の臨床については拙論文(産と婦39(9);1112,1972,産婦治療31(4);345,1976)を参照されたいが,しかし一方,肺を越えての脳,肝,腎などに及ぶ転移巣に対しては,肺転移巣に対するほどの治療効果がみられない。最近のCTスキャンニングなどの応用も,脳転移診断の可能性を示唆するが,肝転移診断は容易でない。
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