特集 腫瘍と免疫
絨腫転移治療における免疫学的配慮
相馬 広明
1
,
豊田 泰
1
,
清川 尚
1
,
近田 利啓
1
,
宮下 忠雄
1
,
赤枝 恒雄
1
,
所 和夫
1
Hiroaki Soma
1
1東京医科大学産婦人科学教室
pp.1037-1043
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204968
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I.絨腫の免疫学的特徴
絨毛性腫瘍には通常の癌とは違つた宿主一腫瘍間の免疫学的相互関係がある。すなわち正常妊娠では母体においては,母親と異質である抗原を父親から承け継いでいる胎児を子宮内に含有しているにもかかわらず,これを排除したり,傷害を加えたりするというような免疫学的機作が行なわれないことや,さらにその胎児性抗原をもつtrophoblast細胞の母体組織内への侵入増殖を来す絨腫の場合にも,これまて免疫学的反応がほとんど行なわれないという奇異な現象があつたり,それなのに一方では稀ではあるが自然退縮例も報告されている。元来trophoblastには抗原性がきわめて弱いか,欠けているという実験的根拠があり1,2),またそのためかtrophoblastに組織適合性抗原(HL-A)を証明することが難しいとされている。
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