疾患の病態と治療 転移
骨・泌尿器・消化器系臓器転移の対策
三浦 徹
1
Toru Miura
1
1神戸大学医学部産科婦人科学教室
pp.525-531
発行日 1977年6月10日
Published Date 1977/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205638
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悪性腫瘍において遠隔臓器に転移が生じた場合,これら転移巣は血行あるいはリンパ行性転移の結果であり,このことはすでに多数の癌細胞が全身に散布されていることを示すものである。したがって転移巣に対する根治的な対策はこの意味においても化学療法が合理的であり,この点に関しては「転移症例の治療指針」の項で十分述べられていよう。しかし現存する化学療法剤はすべての細胞にcytotoxicあるいはcytostaticに作用するわけで,効果と副作用が表裏一体の関係にあり,より積極的な化学療法を施行するにも限界がある。だから実際には,副作用とのかねあいのもとに投与量や投与間隔を工夫する根気強い化学療法を行なわなければならず,したがって効果がみとめられるにはおのずと相当な時間を要する。しかるにこの間にも病状は進行し,患者はこれらに起因する激しい苦痛になやまされる。また転移部位によっては患者の状態は急変し,転移巣に対する根本的な対策を施行するまもなく,致命的な結果を招くこともあり,ここに転移巣に対する治療の問題点がある。すなわち転移症例に対する効果的な方策は,現時点においては転移巣を有する患者の得がたい予後を苦痛なくすごさせるとともに,転移によって生ずる致命的な病態に対して適切な処置をほどこすことであり,これらの対策が十分なされてこそ,はじめて,より根気強い化学療法の遂行が可能となり,ひいては延命効果が得られるものと考えられる。
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