疾患の病態と治療 進行癌への挑戦--延命効果の可能性
進行癌はどこまでなおせるか
化学療法の立場から
服部 孝雄
1
,
新本 稔
1
,
大屋 正章
1
,
峠 哲哉
1
Takao Hattori
1
1広島大学原医研,外科
pp.15-21
発行日 1977年1月10日
Published Date 1977/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205543
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制がん化学療法が臨床にとりあげられてから,もうずい分長い年月が経過した。極めて副作用の強い,使いにくい薬というイメージが始めからつきまとっており,それは今でもそんなに変わっていないが,使う方の知識と経験がいろいろと積まれてきたので,使いにくい薬でもうまく使えば,それなりにメリットがあるという風な評価をもたれるようになってきたといえよう。しかしながら,進行がんを制がん化学療法でどこまで治せるかということになると,固型がんに関する限り,早期のものでも制がん剤だけで治すことはまだまだ夢物語りである。進行がんに対しては正直のところ疼痛などの自覚症状の改善を目標に使って,結果として多少なりとも延命効果がもたらされればというのが,いつわりのない大方の考え方であろう。もちろん10例に1例ぐらいは驚くほどよく効く症例にぶつかることもあるが,その効果の持続となると,ことに胃がんを対象にする限り,はなはだ不満足といわざるを得ない。
編集者の意図に反してはなはだ悲観的な書き出しとなってしまったが,本稿ではわれわれがここ2〜3年力を入れている多剤併用,特に溶連菌製剤ビシバニール(OK−432)の腫瘍内大量投与をベースとした,長期間の制がん化学療法について得られた成績を中心にのべてみたい。なおわれわれの対象は胃がんが大部分であり,婦人科領域の経験がほとんどないことを,あらかじめおことわりしたい。
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