特集 先天異常の胎内診断
血友病患者(保因者)の家族計画における胎内診断の意義
田村 昭蔵
1
,
雨宮 清
1
,
長島 勇
1
,
岩崎 克彦
1
,
板倉 甫能
1
,
木下 芳広
2
,
山田 兼雄
3,4
Syozo Tamura
1
,
Yoshihiro Kinoshita
2
,
Kaneo Yamada
3,4
1慶応大学医学部産婦人科学教室
2慶応大学医学部健康相談センター染色体室
3慶応大学医学部小児科学教室
4荻窪病院小児科
pp.1029-1033
発行日 1976年12月10日
Published Date 1976/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205535
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
先天異常の出生前診断は,最近めざましい進歩をとげ,適応もしだいに拡大されつつあり,社会福祉の増進の見地からも注目されるところとなっている。その適応の一つとして血友病が挙げられている。本症は伴性遺伝性疾患であるところから,その出生前診断の試みは,X-chromatinを指標として歴史は古く,すでにRiis and Fuchs1)は羊水細胞のX-chromatin検査で血友病家系2例の胎児性別を診断し,Fuchs2)は血友病11家系の18名について同様の検査成績を報告している。その後Steel and Breg3)により細胞培養法が応用され,さらにY-chromatinの発見により胎児性別判定は一層正確に行なわれるようになった。このような技術的進歩,また出生前診断一般の進歩普及に伴ない,それを巡るいろいろな倫理的・宗教的問題点が指摘され,論議の対象となるに至った。このような論議に当たり重視されねばならぬ観点の一つとして,出生前診断に最も関わりあいの深い人たちが,これをどのように感じ,受けとめているか,またその背景としてこれらの人たちが,これまで家族計画をいかに考えてきたかという実態に則した現実的観点があげられる。これを等閑視しては,あらゆる議論がすべて単なる抽象論に堕してしまう恐れがある。しかしこれに関しては,近藤ら4),黒木ら5)の報告をみるが,報告は極めて少ない。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.