疾患の病態と治療 卵巣とその周辺疾患・Ⅱ
卵巣腫瘍の早期診断の進歩—内視鏡
落合 寛
1
,
岩田 嘉行
2
,
武井 宏澄
2
Hiroshi Ochiai
1
,
Yoshiyuki Iwata
2
1東京都済生会中央病院産婦人科
2川崎市立川崎病院産婦人科
pp.447-451
発行日 1976年6月10日
Published Date 1976/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205429
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産婦人科領域における診断の進歩は,各分野においてめざましいものがある。子宮癌の診断では細胞診に始まりコルポスコープの導入,絨毛性腫瘍については血清学的検査法による尿中ホルモンの測定,PAG,MEの応用等でその診断はより確実に迅速に行なわれるようになつてきた。しかしながら卵巣腫瘍の診断においては,ME,PAG等の応用はあるが,依然として触診,内診による旧来の方法が主たる方法であり,特に悪性卵巣腫瘍の早期診断については腹水を伴なうような末期癌を除いて,臨床的には極めて困難であり,卵巣悪性腫瘍の早期診断は婦人科領域において焦点の一つとなつている。
卵巣腫瘍の診断上問題になるのは, ①卵巣腫瘍と他疾患の鑑別 ②手術的適応の有無 ③良性か悪性かの鑑別等が考えられ,一般的にはレントゲン検査(HSG,PAG)超音波,ラジオアイソトープ検査が利用されているが,内視鏡検査(Laparoscopy・Culdo-scopy)を利用する方法はいまだにあまり普及していない。内視鏡検査は子宮外妊娠の診断,原因不明の下腹部痛の原因,あるいは不妊症における卵管や卵巣の形態や機能を知るうえでは日常欠かせない方法で,われわれも常用し,診断をより早く確実にという点でまことに有力な方法と考えている。特に近年は内視鏡の直視下に卵巣等の生検や,卵管避妊手術や,卵管剥離,排卵誘発のための切除や卵胞穿刺等の手術的方法も実施されるようになつてきた。今回は卵巣腫瘍の診断についての腹腔鏡応用の自験例を中心に述べてみたい。
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