疾患の病態と治療 産婦人科疾患の免疫学的アプローチ
免疫学的にみた母児相関
高木 繁夫
1
,
近藤 泰正
1
,
田中 忍
1
Shigeo Takagi
1
1日本大学医学部産科婦人科学教室
pp.313-320
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205408
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妊孕現象に対する解釈は,形態学的あるいは内分泌学的などのアプローチのほかmedicoecono—micsにおける人口再生産の概念まで含めて,今日なお一定のそれがなくきわめて複雑化したものといわざるをえない。しかし,Medawar,Billinghamらによる移植免疫学的な考察は,その歴史的な発展過程においては意義がありまた興味深い分野の一つである。すなわち,父方の遺伝子を有する妊卵がそれと対立する母体に拒絶されることなく着床し,発育,出生することは免疫学的には,きわめて奇異な現象であり,この観点よりした妊孕現象の母児相関にも多くの神秘性があるはずである。さらに近年における免疫生物学の進歩,特に免疫遺伝学および細胞性免疫学に対する知見の多くは,自然移植(Nature’s transplantation)の成立としての妊孕現象に新たに画期的な解釈の一面をもたらしている。よつて著者らはこれらの免疫学的な背景と母児間における免疫学的相関の構成因子を中心にして,以下のごとき解説を試みる。
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