年間テーマ--診断から治療へ 術後の機能異常
術後の消化器系の異常—術後イレウスを中心に
馬越 正通
1
Masamichi Magoshi
1
1日本医科大学第2外科学教室
pp.817-821
発行日 1975年11月10日
Published Date 1975/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205250
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開腹手術後の消化器系の異常としては,急性症状を呈する術後イレウスが代表的なものであるといえる。
この術後イレウス発生の原因をみると,その90%は術後の腸管癒着によつて起こつたもので,術後イレウスの大部分は癒着によるイレウスなのである。腸管の癒着があつても,必ずしも症状が出現するものではないが,癒着が原因で,種々の腹部症状を訴えるいわゆる腸管癒着症として慢性症状を呈する場合と,術後きわめて早期に急性イレウスを起こしたり,また術後長期間全く無症状に経過していて突如として急性イレウスの発症をみる場合がある。このような急性イレウスの発症をみたとき緊急手術の避け難いこともあるが,腸管癒着と安易に診断されて治療とくに手術をされ,再癒着を起こしまた再開腹を受けた症例も少なくない。開腹につぐ開腹は腸管癒着を再び複雑化し治療は困難を極め,このようにして生じたpolysur—geryが注目をあびるようになつたが,腹部外科においては,術後の腸管癒着をめぐつて,まだ多くの問題が残されているのである。
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