特集 日常診療上の狙いと盲点・I
外来勤務医として
不妊診療—とくに子宮卵管造影法を中心として
百瀬 和夫
1
,
岡本 清子
1
,
布施 養慈
1
Kazuo Momose
1
1東邦大学医学部産婦人科学教室
pp.310-314
発行日 1973年4月10日
Published Date 1973/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204808
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妊娠分娩は女性機能完成の最高の表現である。挙児を希望しながら妊娠しないことは,その原因がどこにあれ,たとえばmale factorであつても,女性にとつてinferiority complexを抱かせる。長い通院の間には,乳児を懐に抱いた若い母親の腕からそれを奪いとりたい,あるいは車の前に身を投げ出したいよう衝動をおぼえたことが何度となくあつたという告白を聞いたこともある。不妊外来であつかうのは,時に傷ついた体であるが,そのかげに動揺しやすい心があることを忘れてはならない。
結婚または挙児を希望しながら満2年以上たつても妊娠しない場合を不妊症として,検査治療の対象とするが,経済環境の変化,女性の社会的活動範囲の拡大などにより,結婚すなわち妊娠成立希望とは限らなくなつている。治療の過程に応じて,結婚生活の内容,とくに避妊期間の有無やその方法についてくわしく聴取する必要がある。たとえば,結婚当初IUDを挿入し,約1年後に抜去をうけたつもりがそのまま放置されており,10年近い不妊に悩んでいて,造影法により発見された例を経験したこともある。
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