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特集 第8回「脳のシンポジウム」
主題:錐体外路系研究における神経薬理の進歩
大脳基底核の生理学—最近の知見について
Recent advancement of physiology of basal ganglia
吉田 充男
1
Mitsuo YOSHIDA
1
1東京大学医学部脳研究施設神経内科
1Department of Neurology, Brain Research Institute, University of Tokyo
pp.157-161
発行日 1973年2月10日
Published Date 1973/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903484
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Ⅰ.黒質―線状体路(いわゆるドーパミンニューロン)
大脳基底核における,ドーパミンの生化学,螢光法によるドーパミンニューロンの発見などは周知の事実であるが,形態学の面でも,Nautaは,黒質破壊後,線状体に,変性終末を確認した33)。この終末は,きわめて微少なdust-likeなもので,健側と比較して初めて明らかになるようなものである。神経生理学的には,著者ら48,49)は,猫の尾状核の電気刺激により,黒質ニューロンを,逆行性に発火しえた(図1)。つまり,尾状核の二重刺激で,黒質ニューロンは,両刺激に,一定潜時で応ずるが,刺激間隔が2〜3ミリ秒以下になると,二番目の反応は,all-or-none的に消失する。これは,神経軸索の不応期で説明され,尾状核の電気刺激で,黒質のニューロンが,逆行性に発火したことは明らかである。このようにして同定された,黒質―尾状核ニューロンの伝導速度は,1-7m/sec(平均3m/sec)ときわめて遅く,形態学的所見とよく合致する。さて,黒質―線状体の線維は,どのような機能を有しているのであろうか? これが線状体ニューロンに対して興奮性であるとする説は,Albe-Fessard,ら1),Frigyesiら17),Feltzら14)により主張され,他方,Bloomら6),McLennanら29),Herzら21),Ohyeら36)は,この系は,抑制性であるとする。
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