Japanese
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診療メモ
卵管妊娠の診断と治療に関するメモ
Some notes on diagnosis and treatment of tubal pregnancy
清水 直太郎
1
Naotaro Simizu
1
1九州大学温研 産婦人科
pp.317-322
発行日 1960年3月10日
Published Date 1960/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204762
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卵管妊娠の診断は中絶以前には極めて困難で,その疑をおくことさえ考え及ばない場合があり,また疑をおくにしても開腹術を奨める程の確信がないのが普通である。従つて卵管妊娠の診断法と云えば実地上は中絶後のものに就いてである。中絶前とは逆に中絶後のものは,特に無月経,突発性の下腹痛,ショック症状,内出血に伴う比較的少量の外出血,著明な貧血等が揃つた定型的なものは,内診するまでもなく推断出来るほど容易である。然し実際には,それほど定型的な所見を備えたものは少ない。全く無月経がなく,次の月経前に中絶するものが稀でなく,無月経はあれば診断に役立つが,あまりあてにしない方が誤診が少ない位である。著者は無月経はあつたが既往に不妊術をうけて1年以上経過しているので,卵管妊娠を除外して誤診したことがあるから,不妊術後と雖も本症を無視することは出来ない。下腹痛が軽くてショック症状もなく,内科的疾患として看過されてしまつた陳旧のものを,後日他の診断で開腹して発見することも少なくない。但し本症では下腹部に抵抗乃至腫瘤を触れないのに常に圧痛が著明であることが特異で,実地上非常に役立つ所見である。Kulenkampffは腹壁緊張と敏感度との間の不均衡を新鮮な腹腔内出血の1つの重要な所見とみている。
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