同人放談
分娩時の出血
松本 清一
1
1群馬大学
pp.323-324
発行日 1960年3月10日
Published Date 1960/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204763
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分娩時に或る程度の出血を伴うのは止むを得ないことであり,従来正常の場合でも200乃至400cc,平均250cc程度の出血は当然とされている。所がメチルエルゴメトリンの出現で,私共はこれを胎児娩出直後に静注することにより,出血量を半量以下,平均100cc程度に減ずることが出来た。今日では大部分の産婦は出血量が150cc以下であり,50或いは60cc位のものも決して少なくない。
このように分娩時の血液損失が少なくなることが産褥の経過に良い影響を与えるのは当然であつて,おそらく産褥の回復は早まり,褥婦はより早く通常の生活に戻れるようになるであろう。従つて分娩時にはたとえそれが正常範囲であつても,「この位の出血は当然だ」という態度を取ることなく,10ccでも20ccでも出血を少なくするように産科医は努めるべきである。それと共に産褥初期から充分な栄養を摂らせ,早期離床を行なわせるならば,褥婦の生活は従来成書に記載されているのとは全く異つたものになる。
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