特集 感染症の今日的問題
抗菌薬の働らき—基礎研究者から臨床家へ
桑原 章吾
1
Shogo Kuwahara
1
1東邦大学医学部微生物学
pp.661-665
発行日 1972年8月10日
Published Date 1972/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204651
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はじめに
感染症はすべての臨床の領域でかなりの比重を占める疾患であると考えてよい。ところが,天然痘をはじめ,ペスト,コレラ,腸チフス,赤痢(とくに志賀赤痢)あるいは発疹チフスなど,いわゆる法定伝染病に入る,強い特異な菌力と伝達力をもつ感染症は次第に姿を消したか,または発生頻度の著しい低下を示しているのに,一般感染症のほうは,もちろん死亡率は著しく低下したものの,発生数については,詳細な変動はわからないが,少なくとも目立つほどの減少は起こつていない。ただ,原因菌と病状の経過がかなり変つてきたことは事実である。
このような感染症の様相の変化の原因はいろいろあろうが,つきつめてみるとほぼ2つの要因に大別されると考えられる。その1つは抗菌薬の普及による強毒菌の衰退であり,他の1つは一般治療薬ないし治療技術の進歩による宿主側の治療および感染に対する反応力の変化である。
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