特集 新生児の救急対策
先天性心疾患の自然予後と救急対策
新井 達太
1
Tatsuta Arai
1
1東京慈恵会医科大学第一外科学教室
pp.493-497
発行日 1972年6月10日
Published Date 1972/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204619
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はじめに
新生児期に発症する疾患は多様であるが,剖検例および入院例からみて多いのは,完全大血管転位,左心室形成不全,大動脈縮窄,肺動脈弁閉鎖,肺動脈弁狭窄,心室中隔欠損症,総肺静脈還流異常,ファロー四徴症,無脾症候群などである。
これらの患者の救命,延命のためには,新生児期に診断の確立が望まれる。このためには,新生児を診る医師,看護婦,助産婦,母親の鋭い観察が必要で,もし,先天性心疾患の疑いがもたれる場合は,直ちに,小児心臓専門医に紹介されねばならない。 とくに,完全大血管転位,肺動脈閉鎖,大動脈縮窄などの救急処置を必要とする症例では,その疾患の疑い→紹介→診断→検査→治療・手術まで,24時間以内に行なわねばならないことがあり,小児心臓専門医,心臓外科医,麻酔医,看護婦,検査技師のチームが常時,救急に対処しうる状態にある組織が人口20万〜50万に1つずつ各地域にあることが望ましいと高尾は強調している。一昨年訪問したTrontoのHospital for sickchildrenでは,前日の手術予定のほかに,その当日は2〜3例の緊急手術があり,小児科医と外科医,麻酔医の緊密な連繋がとられており,実に見事なものであつた。
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