特集 流早産の治療--最近の焦点
ホルモン以外の薬物療法
森 憲正
1
Norimasa Mori
1
1熊本大学医学部産科婦人科学教室
pp.27-33
発行日 1972年1月10日
Published Date 1972/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204544
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はじめに
受精卵が順調に発育して無事出産するまでの過程は実に巧妙で未だ人知のおよばない領域があまりにも広すぎる。この10ヵ月にわたる期間中妊卵あるいは胎児の損失はどの時期においても起こりうるが,殊に初期の3ヵ月までに多い。したがつて流早産,就中流産は産科領域でしばしば遭遇する重要な疾患の一つとなつている。出現頻度からいえば,妊娠早期に全妊娠の15〜30%の胎芽が自然流産によつて失われているといわれている3,7,9,17)。また届出を義務づけられている妊娠4ヵ月以後の流早死産についてみても全死産の65%が妊娠7ヵ月までにおこつている12)。
妊卵または胎児からみた場合,流産は妊卵に対する自然の摂理による陶汰とも解釈され,自然現象の厳しさの一面を現わしている。特に最近の染色体学の進歩によつて明らかにされた自然流産児における高頻度の染色体異常5,8)からみても,流産は正常子孫を残すための一種の安全弁である(Hertig)ともいえるわけである。
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