最近の焦点
子宮外妊娠とその内分泌動態
高木 繁夫
1
,
尾崎 晴彦
1
Shigeo Takagi
1
1日本大学医学部産科婦人科学教室
pp.713-718
発行日 1971年7月10日
Published Date 1971/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204450
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はしがき
一般に子宮外妊娠(外妊)といえば,卵管妊娠を指すが,この卵管妊娠は産婦人科実地医家がもつともしばしば診断に迷わされる疾患の一つであり,またその発症は急激であるから,迅速かつ的確な診断を下して処置することがのぞまれる。しかるに本症は,古来誤診例の多い疾患の一つであり,またこれを確認するため多くの補助診断法が用いられていることも周知のとおりである。
さらに一口に外妊といつても普通の成書に記載されているような定型的な臨床経過をとるものから,しばしば非定型的な経過をたどるものまで,その種類や病型も多種多様である。したがつて外妊では,卵管妊娠あるいは腹膜妊娠のいかんにかかわらず,その内分泌動態は正常妊娠のそれと異なつて母体と胎盤と胎児のそれぞれでいとなまれる内分泌機能は円滑でなく,また母体には内出血,ショックその他の重篤な合併症を伴つていることがまれでない。したがつて正常妊娠に比べると,ホルモンの生成代謝は障害され,その動態も著しく異なるものと思われる。しかるに本症では前述したごとく,正しく診断して適切な処置,対策をこうずることが要望されてあり,加えて発症以前にそれを診断する可能性もほとんどないことから,主として検索の容易な尿中または血中HCG反応が行なわれ,しかもこれにその診断的意義を求める場合が多いため,HCGを定量的に測定し報告したものはきわめて少ないようである。したがつてその採取に時間がかかつたり,測定手技の煩雑なステロイドホルモンは腹膜妊娠例を除いてほとんど報告例をみることができない状況にある。
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