特集 症候からみた新生児異常の診断
新生児の仮死・無酸素症—Asphyxia is easy to see, but more difficult to define precisely—Schaffer
金岡 毅
1
Tsuyoshi Kaneoka
1
1国立福山病院産婦人科
pp.785-791
発行日 1970年9月10日
Published Date 1970/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204272
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.新生児仮死の定義
新生児仮死の診断のためには,まず私達は新生児仮死とは何であるかについて考えてみる必要がある。古くから産科学教科書1)には新生児仮死が次のように定義されている。すなわち「娩出した胎児が心拍動は有するが呼吸現象を呈しないものをいう。」さらにまた仮死児の皮膚が紫青色を呈し,筋肉の緊張があり,刺激に対する反射運動をみとめ,心拍動は緩徐であるが整調であるものを「第一度仮死」(青色仮死Asphyxia livida)とし,仮死児の皮膚が蒼白色で,筋緊張がなく,柔軟で,反射運動がなく,呼吸運動を全くみとめず,産瘤は柔かく,わずかに緩徐で微弱な心拍動を有するものを「第二度仮死」(白色仮死Asphyxia pallida)と定義する。
しかしながらここで問題となるのは,「呼吸現象」のみを目標とする場合多くの矛盾が生じてくることである。すなわち極度の無酸素血症や,アシドーシスを示す新生児でもgaspのような呼吸運動をみとめることがある。逆に真赤な色をした新生児でも無痛分娩の影響でSleepy babyの状態で生れれば呼吸現象はない。また呼吸現象のみでその児の予後は予断できない。さらに呼吸現象があるからといつてそれが必ずしも有効な呼吸であるとはいえない。等々といつたことである。
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.