特集 異常分娩,産褥の診断
CPDの診断
荒木 日出之助
1
,
藤川 雄平
1
,
黒沢 恒平
1
Hidenosuke Araki
1
1昭和大学医学部産科婦人科学教室
pp.705-710
発行日 1970年8月10日
Published Date 1970/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204258
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はじめに
往年の狭骨盤の分類(Bumm)では産科真結合線が9〜7cmのものを第2度狭骨盤とし,骨産道以外の産科的条件が良好であつても自然分娩は不可能で,経腟分娩には何等かの産科手術を必要とするとある。おそらく今日では経腟分娩に対するこのような考え方で分娩にのぞむ産科医はなく,産科真結合線が9cm以下のような骨盤であつて,しかも胎児が成熟していると思われるような場合は,問題なく帝切が行なわれるであろう。それほど現代の産科学は治療医学的にも発達し,予防医学的にも考えを改めている。従つて児頭骨盤不均衡の慨念も児頭が単に骨産道を通過できないというばかりのものではなく,経腟分娩を強行することによつて,母児に重大な障害をもたらす恐れのあるようなものをも含むのは当然である。
CPDの診断は厳密に言えば各例とも経腟分娩の可能性判定のために一応test of laborを行なつてのち下されるべきである。しかし高度狭骨盤であるとか,甚だしい巨大児で当然CPDが予想できるようなものは,test of laborを試みることなく帝切が行なわれてもよい。それゆえ,CPDの診断で最も臨床的に問題になるものは経腟分娩可否の判定に苦慮するような症例,すなわちCPD発生の恐れのあるborderline caseである。これらは全てtest of laborを行ない,分娩が停止し,母児両体あるいはそのいずれかに危険が切迫するか,またはその恐れがあると断定されたものにCPDの診断が下されるべきである。
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