特集 異常分娩,産褥の診断
子宮破裂の診断
佐藤 美好
1
,
久野 裕
1
Miyoshi Sato
1
1日本医科大学第1病院産婦人科
pp.713-719
発行日 1970年8月10日
Published Date 1970/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204259
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はじめに
妊娠,分娩に合併する子宮破裂は,元来その発生が比較的稀な疾患であつたが妊娠末期から分娩中に突発して起こる重篤な産科緊急疾患の1つで,児の予後はいうまでもなく,母体死亡減少の点では長足の進歩を遂げた現在でも母体死亡の重要な原因として存続していることは見逃がせない事実であつて,救急的処置を必要とするから早期診断が特に大切である。近頃は人工妊娠中絶その他で頻回の子宮内膜掻爬や帝王切開の増加とともに子宮壁損傷あるいは瘢痕縫合不全によると思われる子宮破裂の報告が一方において増加して来ておる。子宮破裂の原因も成書に記載された原因のうち,子宮の形態異常(先天性発育不全,双角子宮),過度伸展(羊水過多,巨大児),分娩障害として母体側異常による(狭骨盤,軟産道の伸展不良,腫瘍),胎児側異常による分娩障害(巨大児,脳水腫,重複奇形)および子宮収縮剤の濫用などよりも,過去の子宮壁損傷特に帝切後の瘢痕,過度の子宮内膜掻爬などが誘因と推定されるものの占める割合が増加の傾向にあることを考慮しておかねばならない。
殊に瘢痕子宮破裂は未だ陣痛が強くなく大した分娩障害があるとは思われない時期にも起こりうる。このことが妊婦検診の場合には,現症の把握と同時に既往歴が重要で,できるだけ綿密に調べておくことなど,この種の危険な合併症の予防の必要性をも強調したい。
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