研究
細胞診判定の客観化—簡易細胞判定器の製作
御園生 雄三
1
,
武田 敏
1
,
鈴木 通也
1
,
守矢 和人
1
,
貝田 豊郷
1
,
安里 洋
1
,
野間 正喜
2
Yuzo Misonou
1
1千葉大学医学部産婦人科教室
2オリンパス光学株式会社
pp.583-589
発行日 1968年7月10日
Published Date 1968/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203911
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子宮頸癌の診断に細胞診の果す役割は大きい。採取法が簡易で反復して採取可能であり患者に何等の苦痛も与えず80%以上の検出率をあげることができる。コルポスコープ,組織診と並んで常用診として用いられておりとくに集団検診等におけるスクリーニングとして欠くべからざるものである。しかしこの細胞診にも問題点はないわけではない。正しい判定ができるまでにある程度の年期がかかり判定基準が主観的に傾き易い。Papanico-laouがIII型として分類した「悪性を疑うが悪性と断定し得ない」標本こそスミアの泣きどころである。もちろんこのような症例には組織診を行ない必要に応じてfollow upすれば良い。しかしかなり細胞診の経験のある医師の間でも判定結果がしばしば不一致となる事実は問題である。細胞診における判定基準の主観性を排し客観化するにはいかにしたらよいか。我々はこの課題に取組んでみた。
スミアの判定にあたって我々は癌細胞の特徴の幾つかをとらえて診断を下す。これがいわゆる悪性基準とか悪性指標とかいわれるものであるがこれを知っていただけでは実際の判定は下せない。癌細胞の1つ1つをとりあげるとこれらの性質を全部そなえていることはまれだからである。核縁不整のない癌細胞,核膜肥厚のない癌細胞,核質粗大顆粒のない癌細胞も数多く見られる。逆にこれらの悪性基準の一つが良性異常細胞にも見られることがある。そもそも核濃度といっても核異型といってもどの程度以上をいうのか判定者によって異なってくる。これではいけない。客観化するということは数量的に表わすことである(表1)。
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