今月の臨床 早期子宮頸癌--今日の焦点
組織診の要点と問題点
松岡 巌
1
,
橋本 威郎
Iwao Matsuoka
1
1岡山大学医学部産婦人科教室
pp.73-77
発行日 1968年1月10日
Published Date 1968/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203830
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I.まず標本の見方に関する一般的注意事項
今一枚の診断を求められる組織標本が自分の前に提出されたとして,検鏡者の立場に立つて脳裡に浮ぶ事がらをごく初歩的なことから思い起こしてみよう。
患者の病歴に必ず目を通すこと。分かりきつたことでありながら案外これをやらない人がいる。送られてくる標本が,みな婦人科関係の標本だから詳細に目を通さずとも標本を顕微鏡で見さえすれば分かるという安易な考え方からであろうが,案外に誤診の原因となつている。標本は常に患者の一部であるという認識が大切である。診断依頼者は子宮の体部と頸部の組織を別々に採つておるのに,頸部組織だけ見て体部の初期腺癌を見落すということもありうるし,病歴にトリコモナス腟炎を疑わしめる帯下の性状が記載されているのにこれを見落したために,トリコモナス性異型細胞を上皮内癌と誤認したりすることもよくあることである。多数の検鏡を同時に行なうときなどは標本と患者の取り違えをやることも笑いごとでなくあることである。病歴を丁寧に読んでいればこんなことは未然に防ぐことができることである。
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