今月の臨床 早期子宮頸癌--今日の焦点
子宮頸癌の発生過程—物質代謝の変化を中心として
武田 敏
1
Bin Takeda
1
1千葉大学医学部産婦人科教室
pp.33-39
発行日 1968年1月10日
Published Date 1968/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203824
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はじめに
正常ならびに病的状態における物質代謝の変動を究明する方法として,生化学と組織化学の二者が今日用いられているが,両者は各々長所と短所を有している。生化学は物質変動の内容を正確に定量的に表現する点は長所となつているが,検索物質が不均一のものより構成されている場合平均的値しか得られない。組織化学はその定量的において,生化学にはるかに劣つているが,いかなる物質が組織や細胞のいかなる部位で変動しているかを明確に示してくれる。肝臓等の物質代謝追求に生化学的方法がある程度まで利用できるのに対し,子宮頸部の上皮性変化を追求する目的で,生化学がほとんど利用されないのは当然のことである。 ことに子宮頸部の一部に発生した上皮異常がいかなる経過を経て悪性化し,またあるものは消退していくかを,物質代謝の変動を通して観察するためには,組織細胞化学的方法によらざるを得ないと考えられる。子宮頸部におけるこの種の研究はForaker, Hopman, Botella等の報告があり,わが国でも御園生,滝,石原,河津の論文がみられる、御園生は1951年TPT反応を発表し,頸癌の細胞化学的診断の端緒を開いたが,その後頸癌について広範囲の物質代謝の検索を行なつてきた。以下,述べていく組織化学的成績は御園生教授指導の下で,著者等が行なつた研究のデーターで文献的なものは含まれていない。なお組織化学的証明法については,紙面の都合で割愛した(附表参照)。
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