連載講座 産婦人科医のための血液学・5
胎児造血
古谷 博
1
Hiroshi Furuya
1
1東京大学医学部分院産婦人科教室
pp.405-411
発行日 1967年5月10日
Published Date 1967/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203699
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はじめに
高等生物における現象には,はるかに遠い昔からの進化の道程が残つており,これは比較解剖学や比較生化学などの方法で理解していかなければならない。したがって,胎生期における造血の研究は,血球の個体発生には系統発生がくりかえされているかどうかを生物学的に把握するためにも,また病的な造血機序を考えるためにもきわめて重要な課題である。
この問題は最近の新しい細胞化学や生化学によつて次第に解明されつつあるが,今日までの系統的研究はMaximowにはじまり,わが国では勝沼,天野らによる細胞学的,形態学的研究が主流をなしていた。その最も重要な所見は,各種の血球に共通した原基がなく,一元論的にそれから各種の血球が自由に分化してくるということはなく,胎児の発育につれて出現してくる原基にはすでに機能的な分化があり,それぞれ出現してくる血球の種類は決定されているということである。
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