特集 妊娠と合併症
疾患をもつた患者の妊娠はどこまで許されるか
古谷 博
1
Hiroshi Furuya
1
1順天堂大学医学部産婦人科学教室
pp.841-844
発行日 1972年10月10日
Published Date 1972/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204683
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はじめに—産科臨床の変貌
妊娠,出産をひかえて,健康な婦人でもその経過や将来の母児の健康について心配するのであるから,いわんや身体的あるいは精神神経的に異常や疾患のある婦人では,妊娠・出産の可能性や安全性にはいろいろな危懼を抱いて医師に相談を求めてくるのが当然である。ことに最近のように定期受診が励行され,また妊娠,出産についての知識が普及すると,かなり微症状と考えられるものについても,婦人にとつては何か重大なことの前兆ではないかと過度に心配する場合も少なくない。
いろいろな疾患が治りやすくなり,妊娠,出産を契機として重大な異常や疾患があらわれてくることが比較的少なくなつたとはいえ,産科臨床の面からみれば’突発する異常や危険も内在しているのであるから,たとえ微症状であつても,婦人の性格によつては,これが適切に処置されないと,心因性疾患が出現する遠因にならないとも限らない。このような昨今の情勢では,疾患や異常をもつている患者に対し,それと妊娠との関係について,病態の解釈や予後の判断,治療など全般にわたりup to dateの適切な説明や処置をすることに時には困難を感ずることも少なくないといつてよいだろう。
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