特集 婦人科の手術管理
術中の管理—外科医の立場からみた輸血,輸液の問題
吉村 敬三
1
Keizo Yoshimura
1
1東京大学医学部胸部外科
pp.19-24
発行日 1967年1月10日
Published Date 1967/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203623
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はじめに
近年各種臨床技術進歩により,外科臨床をめぐる輸血および輸液療法が,かなり合目的となつてきたことは周知の事実である。ことに最近の手術中の輸液管理の問題は麻酔学の発達とともに,ほとんど解決されたかの感がある。すなわち著者らが外科医として,はじめて臨床にたずさわつた約20年前には局麻,腰麻等の簡単な麻酔で限られた時間内に,各種の制限の中で手術を行なわねばならなかつた事実に比し,現在の手術療法は正に隔世の感がある。ここで,過去の消化管手術後の死亡症例につき,主たる死因の分析を行なつてみると表1のごとく,約20年前には,明らかに水分過不足に基づくと思われた症例が,かなりの数に昇つているにもかからず,最近ではそのような症例がほとんど見あたらない。このような事実は婦人科領域でも当然いえることと思う。
さて,著者に与えられた主題は,婦人科手術時の主として輸液管理(輸血をふくむ)の問題ということであるが,外科医である著者には純粋の婦人科手術の経験にとぼしく,その意味では外科手術中比較的類似を求められる消化管手術時の術中管理に焦点をしぼつで,論旨をすすめていくことを御諒承願いたい。
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