講座 新生児疾患診断のポイント・1
吐血と腹部レ線撮影
安達 寿夫
1
Toshio Adachi
1
1東北大学産婦人科学教室
pp.23-25
発行日 1966年1月10日
Published Date 1966/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203399
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新生児疾患にはまだ適確な診断法が少ないので病因そのものが不明のまま主な症状をそのまま疾患名として用いることが多い。たとえば特発性呼吸困難症候群とか新生児高ビリルビン血症とか新生児メレナなどがその代表的なものである。
このうち前の2つの診断名は以前の産科・小児科の参考書にはみられなかつたもので,内容はきわめて簡単なことであるが何となくとつつきにくいとか,このような表現に異論をもつ人もあつて必らずしも一般にひろく普及されているわけではなく,同じ状態に対しさまざまな疾患名が用いられているために新生児の診断はことさらにむずかしいような印象をいだかせてしまつているように思われる。しかし新生児メレナについては古い参考書ほど新生児疾患のうちで大きく取扱われてをり,病因についても新生児初期の出血素因がその主なものであるという考えは一貫しており,ただ剖検例で胃壁に潰瘍やびらんのある例が時折あると述べられているにすぎなかつた。また以前は予後が悪く死亡例も少なくないと考えられていた本症も最近は比較的軽症例が多くなつたためか,わたしがこの3年間に経験した約10例はすべて4〜5日で好転して退院している。ところが今年に入つて経験した吐血の2例がいずれも先天性腸閉塞があつてそのため胃が過度に伸展されて吐血したと考えられるのでその症例診断確定までの経過を中心にして,新生児疾患の診断について考えてみたい。
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